宇宙の犬たち:犬の星座、恒星、宇宙開発の先駆者
宇宙には、驚くほど多くの「犬」が存在します。88の公式星座のうち3つは犬を表し、夜空で最も明るい恒星は「犬の星」と呼ばれています。その暗い伴星には「子犬」という愛称があり、巨大な犬の骨のように見える小惑星まであります。さらに、本物の犬たちも初期の宇宙飛行において重要な役割を果たしました。8月26日の国際犬の日を機に、夜空に残された犬たちの足跡をたどってみましょう。
天文アプリSky Tonightを使えば、この記事で紹介する星座、恒星、星団、銀河、小惑星を検索できます。星空マップは現在地に合わせて表示されるため、宇宙の「犬」が地平線の上にあるかどうかや、観測に最適な時間を確認できます。
目次
肉眼で見られる犬の星座と恒星
まずは、望遠鏡を使わずに見つけられる犬の星座と恒星から見ていきましょう。おおいぬ座とこいぬ座は、12月から3月の宵の空でオリオン座とともに見られます。りょうけん座は3月から6月が見頃で、特に北半球から観測しやすい星座です。
おおいぬ座:大きな犬
おおいぬ座は、夜空で最も明るい恒星シリウスを含むため、犬の星座の中で最も見つけやすい星座です。2世紀にプトレマイオスがまとめた古典的な星座の一つで、一般にはオリオンの猟犬の一匹として描かれています。シリウス、ミルザム、アダラ、ウェズン、アルドラといった明るい星々を結ぶと、犬の胴体や脚、尾らしい形が浮かび上がります。
おおいぬ座を見つけるには、まずオリオン座の三つ星を探します。アルニタクから三つ星の並びを外側へ延ばしていくと、ひときわ明るいシリウスに到達します。北半球の中緯度では、おおいぬ座は南の空の比較的低い位置に見えますが、南半球ではより高く昇ります。見頃は12月から3月の宵で、特に1月と2月は観測しやすい時期です。北緯約60度から南極まで見られますが、北限に近づくほど星座全体を観測するのが難しくなります。星の並びや神話については、おおいぬ座の詳しいガイドをご覧ください。

シリウス:「犬の星」とその「子犬」
シリウス(おおいぬ座α星)は見かけの等級が-1.46で、地球からわずか8.6光年の距離にあります。「犬の星」という呼び名は、おおいぬ座に位置することに由来します。古代地中海世界では、太陽に近く見えない期間を経て、シリウスが明け方の空に初めて現れる「ヘリアカル・ライジング」が一年で最も暑い時期と結び付けられ、英語の「dog days(真夏の猛暑期)」という表現の由来になりました。歳差運動のため、シリウスが明け方に再び見え始める日は時代とともに変化しており、観測地の緯度によっても異なります。
肉眼で見える光の大部分はシリウスAによるものですが、この星系にはシリウスBという白色矮星もあります。シリウスBは親しみを込めて「子犬(Pup)」と呼ばれています。見かけの等級は約8.4ですが、シリウスAより約1万倍も暗いため、望遠鏡でも観測が難しい天体です。観測の成否には、等級以上にシリウスAのまぶしさや大気の揺らぎが影響します。経験豊富な観測者なら、大気が非常に安定した条件下で、光軸を正確に調整した口径10~15cmの望遠鏡を使って分離できることがあります。より大きな望遠鏡と高倍率を使えば、さらに見つけやすくなります。シリウスができるだけ高く昇るのを待ち、光学系をきれいにして観測しましょう。ただし、ハッブル宇宙望遠鏡の画像のように見えるとは限りません。詳しくはシリウスのガイドをご覧ください。

こいぬ座:小さな犬
こいぬ座もプトレマイオスが定めた古典的な星座の一つですが、肉眼で目立つ形はとても単純です。明るいプロキオンと、それより暗いゴメイサを結ぶ一本の線のように見えます。人が暮らすほぼすべての緯度から観測でき、1月から3月の宵が見頃です。
プロキオンは見かけの等級が0.3で、夜空で8番目に明るい恒星です。地球から約11.5光年離れています。その名前は「犬より前」を意味するギリシャ語に由来し、古代ギリシャの緯度ではシリウスより先に昇ったことから名付けられたとされています。シリウスと同じく、プロキオンも暗い白色矮星を伴う連星ですが、一般的な家庭用の観測機材で2つの星を分離するのは困難です。
プロキオンを見つける最も簡単な方法は、冬の大三角をたどることです。シリウス、赤みを帯びたベテルギウス、プロキオンが三角形の頂点を作ります。プロキオンを見つけたら、そこから約4°離れた場所にあるゴメイサを探しましょう。ゴメイサは見かけの等級2.9の青白い恒星です。この2つが、こいぬ座で肉眼でも分かりやすい目印となります。詳しくはこいぬ座のガイドをご覧ください。

りょうけん座:2匹の猟犬
りょうけん座のラテン語名「Canes Venatici」は「猟犬」を意味します。17世紀にヨハネス・ヘヴェリウスが独立した星座として設定し、うしかい座が引くひもにつながれたアステリオンとカーラという2匹の犬として描きました。おおいぬ座やこいぬ座とは異なり、古代から伝わる星座ではありません。また、星図の絵がなければ、2つの星からなる並びを2匹の犬に見立てるのは難しいでしょう。
りょうけん座は、北斗七星の柄の下、おおぐま座とうしかい座の間にあります。最も明るい恒星コル・カロリ(2.9等)は、北斗七星の柄の先端にあるアルカイドから南南西へ約15°の位置にあります。カーラ(4.3等)はコル・カロリから北西へ約5°離れており、見るには暗い空が必要です。コル・カロリは美しい二重星でもあり、約20秒角離れた2つの星を小型望遠鏡で簡単に分離できます。
りょうけん座は3月から6月の宵が見頃で、北半球では特に4月と5月が観測に適しています。北半球から南緯約40度まで見られますが、南半球では北の空の低い位置にしか昇りません。目立つ星は少ないものの、星座の領域内には多くの見事な銀河や星団があります。

ケルベルス座:姿を消した犬の星座

現在の空には犬を表す公式星座が3つありますが、かつての星図にはもう一つ存在していました。ヘヴェリウスは1687年、ヘルクレスの手の近くにケルベルス座を設定しました。冥界を守る三つの頭を持つ番犬を表していましたが、古い星図では犬というより三つの頭を持つヘビのように描かれています。
ケルベルス座は、現在の88星座には採用されませんでした。肉眼で見える4つの暗い星は、現在ではヘルクレス座93番星、95番星、102番星、109番星として登録されています。星座の姿は消えても、その星々は今も夜空に残っています。廃止された星座については、消えた星座に関するクイズでさらに詳しく知ることができます。

宇宙で犬に見える天体
宇宙の犬の中には、人間の想像力によって生まれたものもあります。それぞれ正式な天体名を持っていますが、高解像度画像や長時間露光写真を見ると、犬のような姿が浮かび上がります。
小惑星クレオパトラ:犬の骨のような小惑星
小惑星帯にある小惑星クレオパトラ(216 Kleopatra)は、全長約270kmで、太いくびれによって2つの大きな塊がつながった形をしています。レーダー観測と超大型望遠鏡VLTによる鮮明な画像から、その形が明らかになり、「犬の骨形小惑星」という愛称が付けられました。クレオパトラには、アレックスヘリオスとクレオセレネという2つの小さな衛星もあります。
クレオパトラがアマチュア用望遠鏡で見える明るさになっても、恒星のような点にしか見えません。犬の骨のような形を捉えるには、専門的なレーダー観測や補償光学による撮影が必要です。変わった形の天体については、小惑星帯のガイドをご覧ください。

ハート星雲:写真に浮かぶ走る犬
カシオペヤ座にあるハート星雲(IC 1805、Sh2-190)には、もう一つの姿があります。長時間露光で撮影した一部の画像を回転させたり輪郭をたどったりすると、走っている犬のように見えるのです。ただし、この呼び名は非公式で、すべての画像で同じように犬の形が見えるわけではありません。星雲の広がりは約2.5°で、満月約5個分に相当し、地球から約7,500光年離れています。
ハート星雲の中心には、若い散開星団IC 1805(Melotte 15)があります。その見かけの大きさは約13分角、合成等級は一般に約6.5とされています。周囲を取り巻く散光星雲Sh2-190は約2~2.5°(120~150分角)に広がり、表面輝度が非常に低い天体です。そのため、ハートや走る犬の全体像は主に写真で楽しむ対象です。大型望遠鏡と星雲フィルターを使っても肉眼での観測は難しく、全体の姿を捉えるには天体写真が適しています。小型屈折望遠鏡や望遠レンズを使い、長時間露光とナローバンドフィルターを組み合わせれば、広大な構造を写せます。北半球では秋から冬にかけて見頃を迎えます。11月に見られる深空天体の一つとしても紹介しています。

宇宙へ行った本物の犬たち
人類が軌道飛行を行う前、犬を乗せた宇宙飛行実験が実施されました。これらのミッションは重要な生物医学データをもたらしましたが、犬たちが大きな危険にさらされ、命を失った事実を英雄的な物語の陰に隠すべきではありません。

ライカ:初めて地球を周回した犬
1957年11月3日、ライカはスプートニク2号に乗って打ち上げられ、地球周回軌道に到達した最初の動物となりました。宇宙船には帰還装置がなく、最初からライカを地球へ戻す計画はありませんでした。ライカは打ち上げから数時間後に過熱によって死亡しましたが、その真相は数十年にわたって公表されませんでした。
ベルカとストレルカ:地球を周回し、生還した最初の犬
1960年8月19日、ベルカとストレルカは、一般にスプートニク5号と呼ばれるコラブリ・スプートニク2号に乗って打ち上げられました。2匹は地球を17周し、25時間以上を宇宙で過ごした後、8月20日に無事帰還しました。この飛行によって、生物が打ち上げ、無重力状態、大気圏再突入、着陸に耐えられることが示され、1961年のユーリイ・ガガーリンによる有人軌道飛行へとつながりました。詳しくはベルカとストレルカの物語をご覧ください。
宇宙でさまざまな「初記録」を打ち立てた動物、宇宙船、人物を知っていますか?宇宙初記録クイズで知識を試してみましょう。

宇宙の犬たち:よくある質問
犬を表す星座はいくつありますか?
犬を表す公式星座は、おおいぬ座、こいぬ座、りょうけん座の3つです。ケルベルス座はかつて使われていた星座ですが、現在の88星座には含まれていません。
「犬の星」と呼ばれる恒星はどれですか?
シリウスは、おおいぬ座で最も明るい恒星であることから「犬の星」と呼ばれています。見かけの等級は-1.46で、夜空全体でも最も明るい恒星です。
「子犬」と呼ばれる恒星は何ですか?
シリウスBはシリウスAの伴星である白色矮星で、非公式に「子犬(Pup)」と呼ばれています。見かけの等級は約8.4ですが、非常に明るいシリウスAの光にかき消されるため、観測はとても困難です。
犬の星座を見るのに最適な時期はいつですか?
おおいぬ座とこいぬ座は、12月から3月の宵が見頃です。りょうけん座は北半球の春を代表する星座で、3月から6月に観測しやすくなります。正確な見え方は、観測地の緯度、地平線の状態、時間帯によって異なります。
宇宙へ行った最初の犬は?
ライカは1957年、犬として、そして動物として初めて地球周回軌道に到達しました。ベルカとストレルカは1960年、地球を周回して無事帰還した最初の犬となりました。
宇宙の犬たち:要点
最も見つけやすい宇宙の犬は、おおいぬ座です。オリオン座の三つ星の並びを延長すると、「犬の星」として知られるシリウスが見つかります。冬の大三角を目印にすれば、こいぬ座のプロキオンを見つけられます。北半球の春には、やや目立ちにくいりょうけん座を探してみましょう。この星座には多くのディープスカイ天体があります。ハート星雲は主に天体写真向けの対象で、小惑星クレオパトラの犬の骨のような形を捉えるには、専門的な撮影が必要です。それぞれの天体について、Sky Tonightなら現在地から見えるかどうかを確認でき、空の正しい位置まで案内してくれます。
