過去20年間で最も危険な小惑星:2024 YR4は地球に衝突するのか?

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最近、小惑星2024 YR4が地球に衝突する可能性があるというニュースがインターネット上で話題になっています。それもそのはず、これは過去20年間で最も危険な地球近傍天体の一つとされています。そのサイズと、記録的に高い衝突確率のため、特に注意深く監視する必要があります。では、現在までに分かっている情報を整理し、この小惑星がなぜ危険視されているのか、衝突の確率はどの程度なのかを見ていきましょう。ちなみに、Sky Tonightアプリを使えば、現在この小惑星がどこを飛行しているかを簡単に確認できます。実際に観測することはできませんが、これだけ話題になっている小惑星を追跡するのは、ちょっとしたスリルを味わえるかもしれません。

内容

小惑星2024 YR4:潜在的な衝突リスク

小惑星2024 YR4は、2024年12月27日にATLAS望遠鏡によって発見されました。それ以前の12月25日、この小惑星は地球から83万キロメートル(約月までの距離の2.15倍)の距離を通過していたことが分かっています。公転周期は約4年です。

現在、小惑星2024 YR4は地球から4300万キロメートル離れ、さらに遠ざかりつつあります。しかし、その軌道は今後再び地球に接近する可能性があり、見逃せない距離まで近づく可能性もあります。計算によるとこの小惑星が2032年12月22日に地球へ衝突する可能性があるとされています。これは、計算された6つの潜在的な衝突日程のうち最も近いものであり、最もリスクが高いと考えられています。

小惑星2024 YR4の大きさは?

小惑星2024 YR4の推定直径は44~100メートルで、これはボーイング737型機(小さい方の推定値)や、ビッグ・ベン自由の女神像(大きい方の推定値)と同程度の大きさです。また、1908年に**シベリアの森林2,000平方キロメートルを壊滅させたツングースカ・イベントの隕石(推定50メートル)**とも比較されます。

小惑星2024 YR4の危険度は?

小惑星2024 YR4は、トリノスケール10段階中3にランク付けされています。これは、10年以内に地球へ衝突する確率が1%以上で、局地的な被害を引き起こす可能性があることを意味し、天文学者や一般の注目を集める必要があるレベルです。現在、この小惑星はNASAESAのリスクリストにおいてトリノスケールで3を記録した唯一の天体であり、他の追跡対象はすべて0に分類されています。これは、2004年に**トリノスケール4を記録したアポフィス**以来の新記録となります。

リスクが非常に高いため、国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)は2025年1月29日に「潜在的な小惑星衝突通知」を発行しました。この通知は、地球への衝突の可能性がある小惑星に関する警告を公表するIAWNのプロトコルの一環であり、さらなる観測、リスク評価、そして必要に応じた衝突回避計画の準備を可能にするものです。

小惑星2024 YR4が地球に衝突する可能性:確率と影響

小惑星2024 YR4が地球に衝突した場合の影響や、「衝突確率1%」がどの程度のリスクを意味するのかを詳しく見ていきましょう。

小惑星2024 YR4はどこに衝突する可能性があるのか?

Asteroid 2024 YR4 Hitting Earth

国際小惑星警報ネットワークの声明によると、潜在的な衝突リスクのある地域(インパクトリスク回廊)は、東太平洋、南米北部、大西洋、アフリカ、アラビア海、南アジアに広がっています。このため、衝突が発生した場合、インド、パキスタン、バングラデシュ、ナイジェリア、スーダン、エチオピア、エクアドル、コロンビア、ベネズエラなど、人口密集地域に影響を及ぼす可能性があります。

小惑星2024 YR4が地球に衝突したらどうなる?

衝突の影響は、次の3つの要因によって異なります。

  • 大きさ;
  • 組成;
  • 衝突地点。

大きさ:衝突の爆発規模はどのくらいか?

  • 直径が約50メートル(最小推定値に近い)と仮定すると、衝突のエネルギーは約8メガトンのTNTに相当します。この爆発は、チェリャビンスク隕石事件の16倍の威力を持ち、当時の衝撃波で7,000棟の建物の窓が割れ、1,500人が負傷したことを考えると、大きな被害をもたらす可能性があります。
  • 直径が100メートル(最大推定値)である場合、衝突のエネルギーは50メガトンのTNTに達し、これは核爆発(ツァーリ・ボンバ1発またはリトルボーイ3,333発分)に匹敵する威力となります。危険な小惑星と衝突影響の関係について詳しく知りたい方はこちらのインフォグラフィックをご覧ください
Dangerous Asteroids 101
地球に向かう小惑星はありますか?どのくらいの大きさの小惑星が都市を破壊しますか?このインフォグラフィックをチェックして、危険な小惑星に関するおもしろい事実を学んでください。
インフォグラフィックを見る

組成:空中爆発するのか、それともクレーターを作るのか?

  • 小惑星2024 YR4が岩石でできている場合、大気圏突入時に空中爆発を起こし、大規模な爆発と火球が地表に影響を及ぼす可能性があります。
  • もしで構成されている場合、大気圏をほぼ損傷なく通過し、地表に衝突してクレーターを形成する可能性が高くなります。

衝突地点:どのようなリスクがあるのか?

  • 最も可能性が高いシナリオの一つは、海への落下(太平洋、大西洋、アラビア海など)。浅い海域で衝突した場合、数十メートルの津波が発生し、沿岸都市に深刻な影響を及ぼす可能性があります。深海での衝突なら波は比較的小さくなりますが、それでも国際海運に混乱をもたらす可能性があります。
  • 都市部に衝突した場合(例:ムンバイ、ラゴス、ボゴタなどの大都市)、衝撃波により10~30kmの範囲で建物が崩壊する可能性が高く、人口密集地域では数十万~数百万人の死傷者が出る恐れがあります。
  • 都市から離れた場所に落下した場合でも、環境への影響は避けられません。爆発の熱と衝撃波で森林火災が発生し、数百キロメートル離れた地域でも振動が感じられる可能性があります。

いずれのケースでも、小惑星2024 YR4は地球規模の絶滅を引き起こすほどの脅威ではありません。しかし、局地的な被害は壊滅的になる可能性があります。

小惑星2024 YR4が地球に衝突する確率は?

天文学者による推定値は**0.5%から6%まで幅があり、計算方法によって異なります。この数字は一見すると低いように思えますが、通常、地球近傍小惑星の衝突確率は0.00001%以下であることがほとんどです。さらに、観測が進むにつれて衝突の確率は低下したり、完全に排除されたりするのが一般的です。しかし、現時点ではリスクがむしろ増加傾向にあります。2025年1月の間に、ESAの推定値0.99%から1.32%へ上昇しました。また、NASAは現在、衝突の確率を1.4%**と評価しています。

観測には時間がかかるため、現時点では最終的な結論を出すのはまだ早すぎます。これまでにも、地球に向かっているように見えた小惑星の多くが後の観測によって安全であると判明してきました。これらの事例については、危険な小惑星に関する記事で詳しく紹介しています。この記事では、小惑星衝突による死亡リスクの計算や、地球を守るための対策についても分析しています。興味のある方はぜひご覧ください。

小惑星2024 YR4:今後の展開

衝突確率がこれまで以上に高く、小惑星のサイズも十分に大きいため、国連が承認する2つの小惑星対策グループ(国際小惑星警報ネットワーク(International Asteroid Warning Network、IAWN))と宇宙ミッション計画諮問グループ(Space Mission Planning Advisory Group、SMPAG))が対応を開始しました。これらの組織は、小惑星の継続観測を行い、最終的には宇宙船を使った軌道変更ミッションの検討まで進める可能性があります。

小惑星2024 YR4は2025年4月初めまで観測可能です。この間に衝突リスクが完全に排除されることを期待したいところですが、それ以前に観測できなくなる可能性もあります。その場合、2028年末に再び観測可能になるまで危険な天体とみなされ続けることになります。2029年初めには再び望遠鏡で観測できるようになり、その軌道がより正確に計算されるでしょう。その時点で、衝突まで約4年のカウントダウンが始まります。この期間内に地球防衛の手段を考案・実行できるか(あるいは、その必要がないことが確認されるか)が重要なポイントとなります。

小惑星2024 YR4:まとめ

小惑星2024 YR4は最近発見された天体で、2032年12月22日に地球へ衝突する確率が1%とされています。推定直径は44~100メートルで、衝突すれば都市を壊滅させるほどの局地的な被害をもたらす可能性があります。このリスクは異例の高さとされており、科学者だけでなく一般の関心も集めています。現在、衝突の可能性は増加傾向にありますが、さらなる観測によってリスクが明確になり、最終的には排除される可能性もあります。

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