次に地球から見える彗星:2025年10〜11月にレモン彗星を見る方法

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天文ファンに朗報です!日ごとに増光し、肉眼で見える可能性のある彗星があります。2025年10月〜11月には、レモン彗星が夜空に輝くでしょう—今夜から無料のSky Tonightアプリで追跡を始めてください。本ガイドは、観測計画の立て方や次の明るい彗星を撮影する準備に役立つポイントをお届けします。

内容

レモン彗星(C/2025 A6)について知っておきたいこと

Comet Lemmon
2025年9月24日、Dimitrios Katevainisによって撮影されたレモン彗星。
  • 北半球でレモン彗星の観測に最適なのは10月12日〜11月2日。この期間、C/2025 A6は地球に比較的近く、街明かりの少ない暗い空なら肉眼で見える可能性があります。彗星は10月31日または11月1日ごろに極大光度に達すると予想されています。
C/2025 A6 Lemmon - Best Comet of Fall 2025
2025年8月28日にMichael Jager氏とGerald Rhemann氏が撮影したC/2025 A6彗星。
  • 意外な増光2025年1月3日に発見されたレモン彗星は、当初は21等級ときわめて暗く、小惑星のように見えました。初期予報では望遠鏡でやっと見える程度以上には明るくならないと見込まれていました。しかし太陽との合を経て再出現したのち、8月の最初の観測で彗星活動の活発化が示され、その後1か月のうちに急速に増光しました。

  • おそらく2025年で最も見ごたえのある彗星。この傾向が続けば、10月下旬には暗い空の下で双眼鏡で容易に、条件が良ければ肉眼でも見える明るさになる可能性があります。なお、その時期に同等の明るさに達する彗星はおそらく他にありません。※彗星は予測が難しいため、約束ではなく目安としてお考えください。

C2025 A6 Orbit
2025年の太陽系通過時におけるレモン彗星の軌道。次の帰還まで1000年以上かかる見込みです!
  • 北半球で有利彗星の軌道は144°傾いており、惑星とは逆向きの逆行で移動します。近日点は黄道の北側に位置し、北半球の観測者に有利です。10月10日までに北緯48°以上では周極(沈まない)となります。さらに、多くの地域での夕方の見頃は10月下旬〜11月上旬に重なり、北半球の秋の長く澄んだ夜とタイミングが合います。

  • 古の旅人レモン彗星は過去にも太陽に接近しており、公転周期は約1,350年でした。つまり最後に人々が見たのは千年以上前です。ところが今回の太陽系通過で公転周期が変化しました。4月16日に木星へ3億4,850万kmまで接近し、木星の重力がレモン彗星の軌道エネルギーを奪った結果、周期は約200年短縮され、現在は約1,154年と見積もられています。

レモン彗星(C/2025 A6)はどれくらい明るくなる?

数字で見てみましょう。天文学の等級は数値が小さいほど明るいことを意味します。

初期予報では、近日点に近い11月上旬の極大でも約9等と比較的暗いとされていました。ところが、2025年7月2日の太陽合後、8月中旬の観測で彗星活動の強まりが確認され、約1か月で16.5等から9等へと急速に増光。C/2025 A6は9月に予報された極大に到達し、なお明るさを増し続けています。

C/2025 A6 Magnitude
彗星の推定光度の推移を示したグラフ。

現在の予測では、10月下旬に3.7等級まで明るくなり、街明かりの少ない暗い場所では肉眼で見え、双眼鏡なら容易に捉えられる見込みです。2等級を示唆するモデルもある一方で、より慎重な推定では4等級とされ、これは双眼鏡向きで、観測条件が極めて良ければ肉眼でもかすかに見える可能性があります。

注意:彗星は予定調和ではありません。思わぬ展開に備えましょう。最新情報はSNSで随時お知らせします。

レモン彗星(C/2025 A6)が見える場所

レモン彗星は現在、北半球では明け方の天体ですが、10月中旬ごろには夕方の空へ移ります。高緯度ほど有利で、この頃には北緯48°以北周極(沈まない)となります。

C/2025 A6 Sky Trajectory
2025年10月中旬以降、北緯48度以上の地域ではレモン彗星は周極となり、地平線下に沈みません。

10月下旬〜11月上旬には3〜4等級に達する可能性があり、その後は急速に減光すると見られます。11月下旬には北半球の多くの地域で明るい夕方の薄明の低空に位置し、実質的に観測はほぼ不可能になります。

南半球では現時点では条件がよくありませんが、11月中旬には見え始める見込みです。

2025年におけるレモン彗星の経路

C/2025 A6 Path Through Constellations
2025年9月〜11月に星座間を移動するレモン彗星の経路。

現在、彗星は明け方の空でやまねこ座の領域にあります。続いて北天のこじし座・おおぐま座・りょうけん座・うしかい座を通過し、さらにへび座・ヘルクレス座・へびつかい座へと移動します。11月20日ごろには、夕方の薄明に紛れて見えなくなります。

空でC/2025 A6をどう探す?どこで見える?

どこを探せばいいか分かるよう、レモン彗星の詳しい経路をまとめました。手早い方法が良ければ、無料のSky TonightアプリでC/2025 A6 (Lemmon)を検索し、画面の矢印に従って彗星を追ってください。

10月上旬:観測好機は未明(現地午前2時ごろ)。日の出直前に最も高く昇る。探す方角は北東で、北斗七星の東側おおぐま座の境界付近。離角 約58°

10月中旬: 多くの地域で夕方の空に移ってくる(場所によっては明け方と夕方の両方で見える)。夕方は北西の地平線上(北斗七星の西側)、明け方は北西—北方向(北斗七星の北側)をチェック。10月16日にはコル・カロリ(2.9等)の1°以内を通過。離角 約48°。

10月下旬:*- 夕方が最適。完全に暗くなる(天文薄明終了)まで待つのがおすすめ。うしかい座西の空を探すと、アルクトゥールスが彗星の約10°下**(腕を伸ばした拳1個分)に位置。離角 約39°

10月末〜11月初め(極大):日没後西の空へびつかい座付近。最寄りの明るい星はウヌカルハイ(2.6等)で、彗星の約8°西離角 約33°

11月中旬: 11月8日近日点通過後は急速に減光南半球でも夕方に観測可能になるが、西の低空に留まる見込み。離角 約24°

¹離角:天体が太陽からどれだけ離れて見えるかを角度で表したもの。数値が大きいほど太陽光の影響が少なく、観測しやすくなります。

月の位相

月は強力な光源で、淡い天体の観測を妨げることがあります。観測は月のない夜を狙いましょう。

  • 新月:10月21日
  • 上弦の月:10月29日
  • 満月:11月5日(幸い、彗星とは空の反対側に位置します)
  • 下弦の月:11月14日

詳しくは当サイトの月齢カレンダーをご覧ください。

レモン彗星を撮る方法(初心者ガイド)

Comet Lemmon
2025年9月26日、Victor SabetとJulien De Winterによって撮影されたレモン彗星。

彗星は長くはとどまりません。でも写真は残せます。レモン彗星は天体写真の練習にうってつけ。2025年で最も明るい彗星になる見込みで、暗い空なら数度に伸びる尾も期待でき、撮影のしがいがあります。

彗星を撮るときのポイントは2つ:

  1. 彗星は空を動きます。数十秒の短い露出では動きは目立ちませんが、長時間連写やスタックでは彗星の核が恒星に対してわずかにずれることがあります。

  2. 暗い空が重要です。光害や月明かりはコントラストを落とします。最良の結果にはできるだけ暗い条件を選びましょう。無料のSky Tonightアプリを使えば、彗星の位置や高度、空が最も暗くなる時間を確認できます。

次に、三脚に固定したスマートフォンから、赤道儀(スター・トラッカー)付きカメラ、さらには望遠鏡まで、機材別の撮り方を見ていきましょう。

スマートフォンで撮影する

スマホだけでも、彗星は淡くボヤけた点として写り、尾はかろうじて見える程度かもしれません。それでも挑戦する価値は十分あります。肉眼でレモン彗星が見えなくても、写真には写ることがあります。Sky Tonightで空の中の彗星の位置を確認し、適切な設定で撮影すればOK。やり方は次のとおりです。

  • 三脚または安定した台にスマホを固定する。
  • ナイトモード天体撮影モード(対応機種)をオンにする。

お使いの機種にプロ/詳細設定モードがある場合は、手動で調整しましょう。簡単な設定ガイド:

  • ISO(感度):1600〜3200を目安に。ISOを上げると明るくなる一方、ノイズも増えます。
  • 露出(シャッター速度):5〜10秒に設定。長くし過ぎると恒星や彗星が流れてしまいます。
  • 絞り(F値):スマホでは固定が一般的。値が小さい(例:f/1.8)ほど光を多く取り込めます。
  • ズーム:基本は1×または2×0.5×の超広角では彗星が小さ過ぎます。なら周囲の空も入れつつ彗星を強調可能。3×以上に対応していれば、よりクローズアップを試してみましょう。

カメラ+三脚で撮る

スマホ撮影から一歩進んだ基本セットです。星景の広角カットから、彗星と短い尾をやや大きく捉えたカットまで狙えます。

  • レンズ: 風景には 14–35mm、彗星を大きく撮るなら85–135mm
  • ISO1600–3200
  • 露出: 広角は 10–20秒、短めの望遠は恒星の流れを避けるため 5–10秒
  • 絞り: できるだけ開く(f/2–f/2.8
  • ピントマニュアルで、彗星付近の明るい星に合わせる

ヒントSky TonightARモードを使うと、彗星と木・山・建物などのランドマークを画面上で重ねて、印象的な構図に合わせやすくなります。

カメラ+三脚+望遠レンズ/望遠鏡で撮る

彗星の核を大きく尾の一部までクローズアップできます。追尾なしの場合は露出を短く抑える必要があります。

  • 焦点距離200–500mmの望遠レンズ、または口径80–100mm程度の小型望遠鏡
  • ISO1600–3200
  • 露出1–5秒(像の流れ/にじみを防ぐため)
  • 絞り: 望遠鏡では一般的に f/4–f/5 前後

この設定でも鋭い彗星核淡い尾の気配が写せます。より細部を引き出すには、短い露出のコマを多数撮影し、後処理でスタックしましょう。

カメラ+三脚+赤道儀で撮る

赤道儀は天球の動きに追尾するため、長時間露出が可能になり、彗星の尾の淡いディテールを引き出せます。

  • レンズ50–200mm
  • ISO800–1600
  • 露出: 焦点距離に応じて 30–120秒
  • 絞りf/2–f/4
  • テクニック二重スタックを作る(恒星合わせ彗星合わせの2種類)。後処理で合成して、星も彗星も両方シャープに仕上げる。

カメラ+三脚+赤道儀+望遠レンズ/望遠鏡で撮る

最も高精細な結果が得られ、尾の微細構造や、イオンテール/ダストテール微妙な色の違いまで捉えられます。

  • 焦点距離300–500mm の望遠レンズ、または小型屈折望遠鏡
  • ISO800–1600
  • 露出: 1コマ 20–60秒
  • 絞りf/4–f/5(望遠鏡では一般的)
  • スタッキング彗星に合わせてフレームを位置合わせし、核をクリアに保つ。

レモン彗星(C/2025 A6)の発見

マウント・レモン・サーベイは2025年1月3日、21.5等級でこの天体を初めて記録しました。非常に暗かったため、当初は小惑星状天体と考えられていました。後に、2024年11月12日に撮影されたPan-STARRSのプレカバリー画像が同定されました。追観測では濃いコマ(約2.2秒角)と短い尾(約2秒角2025年2月21日に確認)が判明し、彗星であることが確定しました。発見から約1か月半後、本天体はC/2025 A6 (Lemmon)として公表されました。C/2025 A6(レモン)は力学的に古い彗星で、過去にも太陽近くを通過しています。

まとめ:C/2025 A6(レモン)の要点

  • タイプ:力学的に古い長周期彗星
  • 公転周期:1,350年(進入時)/1,154年(離脱時)
  • 近日点:2025年11月8日、0.53 AU
  • 地球最接近:2025年10月21日、0.60 AU
  • 予想最大光度:4等級(双眼鏡で容易、条件が極めて良ければ肉眼可);近日点前後(2025年11月8日ごろ)
  • 観測好機:北半球の10月下旬〜11月上旬

レモン彗星は、2025年10月下旬〜11月上旬の観測に最適なターゲットです。増光が続けば約4等級に達し、双眼鏡で容易に、条件が良ければ肉眼でも見える可能性があります。北半球が先に好条件となり、南半球では11月中旬から見え始めます。空での現在位置は無料のSky Tonightアプリで確認してください。

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