大気差が変える空の見え方:観察できる5つの不思議

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大気差(たいきさ)は、地球の大気によって光が屈折することで生じ、地平線近くの天体の見え方を変えます。例えば、月がつぶれて見えたり、太陽が幾何学的には地平線の下にあっても見えたりします。

自分でも確かめてみませんか?Sky Tonightのカレンダーで、現在地での太陽や月の出入りの時刻と位置を調べ、地平線付近の変化を観察しましょう。ここでは、大気による光の屈折のしくみと、平たく見える夕日から一瞬のグリーンフラッシュまで、空の見え方が変わる5つの不思議を紹介します。

内容

1. 平たく見える太陽

地平線近くで平たく見える太陽
大気による屈折で、昇る太陽や沈む太陽が縦に縮んで見え、本来は円形の太陽が平たい楕円のようになります。

大気差を確かめる簡単な方法の一つは、沈む太陽の写真を見ることです。太陽が真円ではなく、平たくつぶれた楕円に見える場合があります。これは、太陽の下端から来る光が上端から来る光より強く屈折するためです。

太陽が地平線に近づくと、下端からの光はより密度の高い大気の層を通り、屈折の大きい経路を進みます。そのため、下端のほうが上端より大きく持ち上がって見えます。結果として、太陽の見かけの縦方向の直径は小さくなり、横方向の直径はほとんど変わりません。

大気差で太陽が平たく見えるしくみ
大気差は太陽を持ち上げて見せ、上端からの光より下端からの光を強く曲げます。下端がより大きく持ち上がるため、縦方向の直径が縮み、太陽が平たく見えます。

地平線付近に温度の大きく異なる空気の層があると、変形が特に目立つことがあります。温度差によって太陽光の曲がり方が不均一になり、太陽が引き伸ばされたり、いくつかに分かれたり、二重に見えたりするのです。

特に面白い例が、沈む太陽がギリシャ文字のΩに似た形になるだるま夕日です。大気による屈折で、本来の太陽の下に上下が逆になった像ができ、地平線付近で二つがつながって見えるときに起こります。

だるま夕日:大気の屈折が生む不思議な形
だるま夕日は、沈む太陽の下に上下が逆になった像が現れ、ギリシャ文字のΩに似た形になる現象です。

自分で確かめよう:地平線近くの太陽の写真と、太陽が高い位置にあるときの写真を比べてみましょう。形の違いが驚くほどはっきり分かることがあります。太陽の撮影や観察では、必ず適切な太陽観察用フィルターを使い、安全な方法を守ってください。

ほかの不思議な空の現象も気になりますか?大気現象クイズで知識を試してみましょう!

2. 早くなる日の出、遅くなる日の入り

驚くことに、日の出で太陽の端が見え始めたとき、太陽全体はまだ幾何学的には地平線の下にあることがあります。大気が太陽光を曲げるため、太陽が本来の位置より高く見えるのです。日の入りでも同じことが起こり、太陽が幾何学的には地平線の下に沈んだあとも見え続けます。

ノヴァヤゼムリャ効果:地平線の下の太陽が見える
ノヴァヤゼムリャ効果は、強い大気の屈折によって通常なら極夜が終わる前に太陽が見える、まれな現象です。太陽の幾何学的な位置は、まだ地平線より大きく下にあります。

まれに、この効果が非常に大きくなることがあります。その一例が、1597年に北極の探検家たちが報告したノヴァヤゼムリャ効果です。地表付近の冷たい空気の上に暖かい空気が重なる強い逆転層ができると、太陽光が地球の丸みに沿って曲がり、通常なら極夜が終わる前に太陽が見えることがあります。太陽は異様に引き伸ばされたり、横長の帯に分かれたりして見える場合もあります。

硬貨と水でできる簡単な光の屈折実験
カップの縁に隠れていた硬貨が、水を入れると見えるようになります。光が水から空気へ進む際に曲がり、硬貨が実際より高い位置に見えるためです。

自分で確かめよう:空の不透明なカップの底に硬貨を置きます。カップの縁に硬貨が完全に隠れるまで目の位置を下げてください。頭を動かさずにゆっくり水を注ぐと、硬貨が少しずつ見えてきます!硬貨から来る光が水から空気へ進む際に屈折し、縁が直接の視線を遮ったままでも光が目に届くためです。同じように、地球の大気は太陽光を曲げ、太陽が地平線の下にあっても見えるようにします。

大気差で昼の長さはどれくらい延びる?

大気差によって、地球に大気がない場合よりも日の出が数分早く、日の入りが数分遅く見えます。正確な差は緯度、季節、大気の状態によって変わります。

もう一つ大切なのは、日の出と日の入りを、太陽の中心ではなく、太陽の上端が地平線に現れる、または消える時刻で定義することです。

天文計算では、一般に次の二つを考慮します。

  • 大気差:地平線付近で約34′。
  • 太陽の見かけの半径:約16′。

この二つを合わせると、日の出・日の入りを通常、太陽の幾何学的な中心が地平線より約50′下にあるとき(0.83°)として計算する理由が分かります。

これは春分・秋分の興味深い特徴も説明します。春分や秋分は昼と夜がそれぞれ12時間の日とよく言われますが、実際には多くの場所で昼が12時間より少し長くなります。大気差で太陽が見える時間が延びるうえ、日の出・日の入りを上端で定義することでも昼が長くなるためです。

3. 平たく見える月

地平線近くで平たく見える月
大気差によって、昇る月や沈む月がつぶれて見えることがあります。月の下端が上端より大きく持ち上がって見えるためです。

月も大気差の観察に適した天体です。満月が昇るときや沈むとき、特に下端がつぶれたようにはっきり見えることがあります。

理由は太陽と同じで、月の下側のほうが上側より大きく持ち上がって見えるためです。大気の状態によって、月の縁が波打ったり、不規則になったり、大きくゆがんだりすることもあります。

自分で確かめよう:地平線がよく見え、遮るもののない場所で、昇る満月や沈む満月を観察しましょう。少し平たい形や不規則な縁に注目してください。月が高く昇るにつれて、月の円盤は丸くなり、ゆがみも小さくなるはずです。

大気差で月は大きく見える?

月の錯視:地平線近くの月が大きく見える理由
地平線近くの月は、空の高い位置にあるときよりずっと大きく見えることがあります。この錯覚は、大気差ではなく、脳が月の大きさをどう捉えるかによって生じます。

いいえ!これは大気差についてよくある誤解の一つです。

地平線近くの月は、特に建物や木、山の上に見えると巨大に感じられます。しかし、月の錯視と呼ばれるこの現象は、主に脳が視覚情報をどう解釈するかに関係しています。

通常の大気差は月を拡大しません。地平線付近で縦方向の直径を少し縮めるだけです。次に地平線上の月が巨大に見えたら、思い出してください。大きく感じるのは主に錯覚ですが、平たく見える形は実際の大気の効果です。

地平線近くの月と高く昇った月の比較
月の見え方が高度によってどう変わるかを比較しています。大気差は地平線付近の月の縦方向の直径を少し縮めますが、横幅は変わりません。赤みがかったオレンジ色は大気の散乱によるものです。

自分で確かめよう:満月が昇って間もないころに撮影し、同じ夜、月が高くなってからもう一度撮影します。カメラと焦点距離を同じにし、画像の大きさを変えずに、月の横方向と縦方向の直径を比べましょう。通常、横幅はほぼ同じですが、地平線近くでは縦幅が小さくなります。平たさは大気差の影響を示し、ほぼ変わらない横幅は、地平線の月が巨大に感じられるのが錯覚であることを示します。

4. 位置がずれて見える星

大気差は星の見かけの位置をどう変える?
大気差によって、星は本来の幾何学的な位置より高く見えます。ずれは地平線付近で最も大きく、精密な天文観測に影響することがあります。

大気差によって、星は幾何学的な位置より少し高く見えます。地平線付近で最も強く現れる効果で、星が幾何学的には地平線の下にあっても見え続ける場合があります。

このずれは通常、見慣れた星座の形を大きく変えるほどではありませんが、精密な天文測定では重要です。

大気差は、合の際の天体どうしの見かけの角距離もわずかに変えることがあります。特に、二つの天体の高度が異なる場合に影響します。掩蔽の精密な観測にも影響を与えます。

5. グリーンフラッシュ

日の入りのグリーンフラッシュ
太陽が地平線の下へ完全に消える直前、上端に緑の閃光が一瞬見えることがあります。

大気による屈折に関係する特に魅力的な現象が、グリーンフラッシュです。太陽の上端に緑色の光が一瞬現れる現象で、日の出や日の入りのときに見えることがあります。

グリーンフラッシュは、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』で見たような派手な閃光とは限りません。多くは、太陽の上端にある小さな緑色の斑点や、離れた細い帯として見えます。一般的なものは約1〜2秒続きますが、まれな種類では約15秒続くこともあります。

月・金星・水星のグリーンフラッシュ
月、金星、水星の縁に現れた、まれなグリーンフラッシュを捉えた写真。

グリーンフラッシュは太陽で起こるものとしてよく知られていますが、月や、金星・水星など明るい惑星の縁にも現れることがあります。こちらははるかに観察が難しいものの、写真に記録されています。

なぜグリーンフラッシュが起こる?

グリーンフラッシュが起こるしくみ
地球の大気が太陽光の色ごとに異なる量の屈折を起こし、日の入りのときに緑の光が少しだけ長く見えるしくみを示した図。

太陽光にはさまざまな色が含まれ、地球の大気はそれぞれの色を少しずつ異なる角度で曲げます。青や緑のように波長の短い光は、波長の長い赤い光より強く屈折します。この屈折の違いによる色の分離を大気分散といいます。

日の入りでは、屈折が小さい赤や黄色の光が先に地平線の下へ消えます。緑の光はより大きく曲がるため、少しだけ長く見え続けます。青や紫の光はさらに強く曲がりますが、その多くは大気で散乱されてしまいます。そのため、太陽が消える直前まで、はっきり見える最後の色は通常、緑になります。最も一般的なグリーンフラッシュでは、蜃気楼が本来は非常に細い緑の縁を拡大し、見えるようにします。詳しくは、こちらのグリーンフラッシュの科学的解説をご覧ください。

グリーンフラッシュを見るには?

グリーンフラッシュは、次のような条件で見られやすくなります。

  • 海上など、地平線や水平線がよく見え、遮るものがない。
  • 大気が比較的澄んでいて、地平線付近にかすみや雲が少ない。
  • 沈む太陽が地平線付近で大きくゆがんで見える。これは、空気の層の間に好条件となる温度差がある兆候かもしれません。
  • 太陽がちょうど地平線の下へ完全に消えようとしている。

グリーンフラッシュは日の出でも起こりますが、太陽が現れる位置を正確に知っておく必要があるため、一般に捉えるのが難しくなります。

安全上の注意:明るい太陽を見つめたり、太陽観察用フィルターを付けていない双眼鏡、望遠鏡、カメラレンズで観察したりしないでください。太陽を直接観察する際は、安全性が確認された太陽観察用の保護具と適切な太陽フィルターを使用してください。

ほかにも不思議な空の現象を知りたい方は、昼間に観察できる天文現象もご覧ください。

大気差はどのように生じる?

地球の大気は密度の異なる空気の層からなり、通常は地面に近いほど密度が高くなります。光はその層を通るときに少しずつ向きを変えます。私たちの目は、入ってくる光が直進してきたものとして捉えるため、天体が本来の位置より高く見えるのです。

効果は地平線付近で最も強くなります。光が大気の中をより長く通るためです。一般的な条件では、地平線上の天体は屈折によって約34分角(0.57°)持ち上がって見えます。これは満月の見かけの直径を少し上回る量です。

天体の見かけの高度、つまり地平線よりどれだけ高く見えるかによって、効果は次のように変化します。

見かけの高度大気差の目安
0°(地平線)34′
5°10′
10°5′
20°3′
45°1′
90°(天頂)0′

値はおおよその目安です。実際の大気差は気温、気圧、その他の条件によって変わります。

1分角(′)は1度の1/60です。こうした角度をイメージするには、空の距離の測り方を紹介したインフォグラフィックをご覧ください。

Measuring Distances In Space
天体が「月から5度離れている」とはどういう意味か考えたことはありませんか?このインフォグラフィックでは、空の距離をどのように測るかを解説します。
インフォグラフィックを見る

大気差についてよくある質問

大気差は星がまたたく原因?

間接的にはそうです。星がまたたくのは、乱れた空気によって星の光の屈折のしかたが絶えず変化するためです。これは、天体の見かけの位置をずらす通常の大気差とは異なります。詳しくは、星がまたたく理由を解説した記事をご覧ください。

大気差で太陽は大きく見える?

いいえ。通常の大気差は太陽を大きくするのではなく、少し平たく見せます。下端が上端より大きく持ち上がって見えるためです。

大気差で地平線の下の天体が見えることはある?

あります。屈折によって、幾何学的には地平線の下にある天体からの光が曲がり、観測者に届くことがあります。そのため、太陽は幾何学的な位置が地平線の下になったあとも、しばらく見え続けます。

冬は大気差が大きくなる?

必ずしもそうとは限りません。ただし、ほかの条件が同じなら、冷たく密度の高い空気は屈折を強めることがあります。効果は気圧や気温、空気の密度が高度とともにどう変化するかによって決まります。急激な温度変化や逆転層によって、非常に強い屈折が起こることもあります。

日の出や日の入りが予測時刻とずれるのはなぜ?

日の出・日の入りの計算では、平均的な大気の状態と水平な地平線を仮定します。実際には気温の変化で屈折が変わるため、水平線がよく見える海でも、観測した時刻が予測から1分以上ずれることがあります。丘や山、観測場所の標高によって、さらに大きな差が生じる場合もあります。星空アプリで観測を計画するときは、予測時刻の数分前には準備を整えましょう。

大気による屈折は太陽や月の色を変える?

大気による屈折は、グリーンフラッシュのように色をわずかに分けることがあります。ただし、地平線付近の太陽や月がオレンジ色や赤色になる主な原因は、屈折ではなく大気による散乱です。太陽光や月の光が大気の中を長く通ると、波長の短い光ほど強く散乱され、暖色系の色が目立つようになります。

皆既月食で月が消えないのはなぜ?

皆既月食では、地球が月へ直接届く太陽光を遮ります。しかし、地球の大気が一部の太陽光を地球の影の中へ曲げるため、その光が月面に届きます。同時に大気の散乱によって青い光の多くが取り除かれ、月が赤っぽく見えます。詳しくは、月食ガイドをご覧ください。

宇宙でも大気差は起こる?

天体の光が屈折するには、大気など光を曲げる媒質が必要です。宇宙の真空中では大気差は起こりません。ただし、重力によって光の進む向きが変わることはあります。これは重力レンズ効果と呼ばれる、まったく別の現象です。

大気差は地球平面説を裏付ける?

いいえ。地球平面説の支持者の中には、遠くの物体が地平線の下に消えたり、太陽が沈んで見えたりする理由を大気差で説明する人もいます。しかし、その説明は地球の大気で光が実際にどう曲がるかと一致しません。屈折は物体を本来より高く見せることはあっても、地球が丸いことによる影響をなくすものではありません。地球が丸いことを確かめる7つの方法で、ほかの証拠も紹介しています。

大気差:覚えておきたいこと

大気差は小さいながらも、空の見え方を変える重要な効果です。天体を本来の幾何学的な位置より高く見せ、地平線近くの太陽や月を平たくし、昼の時間を少し延ばします。特別な条件では、グリーンフラッシュのような見事な光学現象を生むこともあります。

星空観察で覚えておきたいのは、天体の高度が低いほど、地球の大気が見え方に強く影響するということです。Sky Tonightで天体の動きを追ってみましょう。屈折の効果を確かめるなら地平線近くで、その影響を抑えたいなら空の高い位置で観察してください。

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